第1話を読んでいない方はホームからどうぞ。
(だれだろう? 見たことないおじいさんだな…… 迷子にでもなったのかな?)
この辺りは田舎で、古い民家がたくさん集まった小さめの村だ。
おまけに通り抜けができない袋小路になっている村なので、この村以外の人をここで見ることは滅多になかった。
そのおじいさんは、壊れた滑り台横の、この空き地につながる小路に立っていた。
小路の両サイドには、大きな木が並ぶように植えられていたために、その影のせいでおじいさんの表情がよくわからない。
ただ、黒いズボンにダボダボで膝まである黒い上着、頭の毛はないけど白くて立派な髭があるのはわかった。
なんだかアニメに出てきそうなおじいさんだ。
サっちゃんを見ると、サっちゃんは妙ちくりんな昆虫を観察するような眼で、そのおじいさんをジ~ッと見つめている。
そしてボクが、サっちゃんからおじいさんに眼を戻した瞬間だった。
「何をしておるんじゃな、坊やたち」
再度そう言いながら、おじいさんが手をうしろに組んでこっちに歩いてきた。
小路の影から出てきたおじいさんの眼が、キラッと光る。
その眼光はボクの内部に飛び込んできて、ゾクッとさせた。
何かを暴くような眼だ。
(うわっ、マズイ! 怒られる)
そのおじいさんの眼を見て我に返ったボクは、取り繕うように、
「この子が、めずらしいクローバーを見つけたから、見せてもらおうと思ってただけだよ」
と、とっさに何食わぬ顔をして言っていた。
さしずめ、今のボクの言い方は、{イジメてるように見えたかもしれないけど、ボク、イジメてなんかいないよ}って感じの、イジメている者がよく使うセリフそのものだった。
それを聞いたサっちゃんは、{なに言ってんのよッ!}という眼で、ボクをキッと睨んだ。
(4歳近くになると、何を言っているかがわかるようになるのがチョット困るな…)
そんな勝手なことを思いながら、今度はボクが{変なこと言うなよな}と言わんばかりに、サっちゃんをジロ~ッと見た。
するとおじいさんが、ゆっくりとボクたちに近寄ってきたので、
「ほらサっちゃん、おじいさんに見せてあげてごらん」
と、ボクは{ボクたち仲良く遊んでいたんだよ。おじいさんも一緒に遊ぼうよ}っていう感じで言うと、サッちゃんの眼がキッとした眼から、卑怯者を見るジト~ッに変わっていった。
**********
サっちゃんは、近寄ってきたおじいさんにクローバーをそっと手渡すと、おじいさんは大事そうに受け取ってサっちゃんに語りかけた。
「ほぉ、葉っぱがたくさん付いておるようじゃのぉ」
「7枚ついてるよ。7つ葉のクローバーだよ」
サっちゃんじゃなくて、ボクが元気な声で、いかにも子どもらしく即答した。
「ほぉ~ッ! 7つ葉のクローバーとは、これまためずらしいのぉ。お嬢ちゃんが見つけたのかのぉ?」
おじいさんはボクを無視して、まるで孫に驚いて見せるような笑顔で尋ねると、サっちゃんに明るい笑顔が戻った。
「すごいのぉ、お嬢ちゃん。本当にすごいクローバーを見つけたのぉ!」
誉められたサっちゃんは、満面の笑みになっておじいさんにコクリと頷くと、その明るい笑顔のまま振りかえって、ボクにニコッとしてくれた。
その2人の笑顔を見ると、ボクも思わずニッコリと微笑んだ。
我、許されたり。と…
(なんとか怒られずに済んだみたいだな。それに悪いおじいさんじゃなさそうだ)
2人の笑顔に安堵したボクは、
「おじいさん、どこからきたの?」
って聞くと、おじいさんは白髭を撫でながら、
「あっちの方じゃよ」
と、西の方を指差した。
「ふ~ん、じゃあ、ここに何しに来たの?」
「ブラブラ散歩しとったら、ここにたどり着いただけじゃよ」
(やっぱり迷子だよな。といっても、おじいさんだから迷子じゃなくて迷いじいさんかな。素直に迷子になったって言えばいいのに、このおじいさん…アハハッ)
ボクは、{我ながら上手いこと思いついたな}と、ひとりでニヤついていた。
おじいさんは丹念に、そしてめずらしそうにクローバーを見たあと、
「ほれ、そろそろお嬢ちゃんに、大切な宝物をお返ししようかのぉ」
そう優しくサっちゃんに微笑みかけると、サっちゃんはおじいさんのシワシワの手から大事そうにクローバーを受け取った。
そんな2人を見ていると、おじいさんが思い立ったように、
「そうじゃ、ご褒美にお菓子でもあげようかのぉ」
って言うと、駄菓子屋の茶色い紙袋の中から何やらゴソゴソと取り出した。
「ほれッ」
ポン
「えッ?」
おじいさんはサっちゃんにではなく、ボクに手渡してきた。
「{!}…こ、これは!」
それを手にしたボクは、自分の眼を疑った。
それは、小さいヤツならたまに食べれるけど、その大きさのモノは年に1度くらいしか食べさせてもらえないという、お菓子の王様「板チョコ」だった。
**********
「あッ! 板チョコだ。この大きな板チョコ1枚、全部くれるの?」
「もちろんじゃ、全部あげるとも、仲良くお食べ」
「あの、おじいさん… コレ、ホントに貰っていいの?」
ボクは、ホントにお菓子の王様が貰えるなんて、まだ信じられなかった。
「遠慮せんでも、ええんじゃよ。2人で分けてお食べ」
(どうやら、ホントに貰ってもよさそうだ)
そう思ったボクは、
「うんッ! おじいさん、ありがとう」
と、うれしくてたまらなくなっていた。
この村では、板チョコを持っているというだけでヒーローになれる。
それは、この村の変なしきたりというか習慣というかは知らないけど、子どもがチョコレートを食べたいなんて言うと、大人たちは{虫歯になる、鼻血が出る、飯が入らなくなる}…、挙句の果てには{大人の食べ物だからダメ}なんてことを言っては食べさせない。
小さいチョコならOKなのにだ。
まぁ、周りの大人がそんなだから、駄菓子屋にも小さなチョコしか置いていない。
なのでボクたちは、板チョコを見ることさえもなかなか叶わないのだ。
そんなワケで、この村では板チョコひとつで誰でもヒーローになれたのだから、うれしくないハズがない。
(やったぞぉ~、板チョコだぁ~!)
ボクは、ニコニコしながら手にした板チョコを見つめていた。
チョコレートが大好きなサっちゃんも板チョコを見て、うれしそうにニコニコしてる。
「ほれ坊や、そんなにずっと手に持っておると溶けてしまうぞ。早く2人で分けてお食べ」
おじいさんは目尻にシワを寄せて、やさしくすすめてきた。
(そうだそうだ、早く食べよう。みんなに自慢したいけど、ボクが板チョコを持ってたことは、サっちゃんとおじいさんが証人になってくれるから大丈夫だ)
「よしッ、サっちゃん食べよう。分けるから待ってて」
ボクが外側の茶色い包み紙を、もう一度使えるんじゃないか?って思えるくらいキレイに剥がし、次に銀紙を剥がそうとしたそのときだった。
「ただしじゃ!」
ボクの手が止まった。
でもその声は優しい声色だったから、なんの心配もなくおじいさんを見つめて、続く言葉を待った。
「割っていいのは、1回だけじゃぞ。よいな坊や?」
いたずらっぽい笑顔をしたおじいさんが、ボクを見つめながらそう言ってきた。
そのおじいさんの表情は、さっき笑顔で挑戦状を送ってきたときの、サっちゃんの表情とソックリだった。
{さぁ、かかっておいで}の顔つきだ。
ボクに、メラメラとした感情が湧きあがってくる。
(おじいさんからの挑戦状だッ。1回しか割ってはいけない、なんてこと言うってことは、コレはクイズだな。よ~しッ、見てろよ! そんなの簡単、板チョコに切ってある溝のところで割れば、チョチョイのチョイだ!)
意気込んだボクは、続く銀紙は再生不能となる剥がし方をした。
**********
…ところがどっこいだ。
ムキ出しになった板チョコをよく見ると、溝が切ってあるには切ってあるけど、その切り込みが真ん中にはない。
縦にも横にもだ。
(う~ん、困ったなぁ、どうしよう)
そう考えた挙句、ひらめいたボクは、
「ねぇ、おじいさん、割っていいのは1回だけだって言ったよねぇ?」
「そうじゃよ。割るのは1回だけじゃよ」
「なら、爪で溝をつけて割るのはいいの?」
「まぁ、割るのは1回と言っただけじゃからのぉ…、ふむ、まぁ、ええじゃろ」
ってなことで交渉成立。
ボクはシメシメと思いながら、板チョコの真ん中らへんに親指の爪で溝をつけた。
(よし、このくらいでいいや。あとはキレイに割れるのを祈るだけだ)
ボクは呼吸を整えて、慎重に両手で板チョコを握り、
「ウリャ!」
パキッ
ボクの掛け声とともに、乾いた音を立てて板チョコが割れた。
「あッ!・・・う~ん…」
(なんてこった…)
完全に失敗だった。
どう見ても右手のチョコの方が小さい。
左手のチョコの半分くらいしかない。
キレイに半分どころか、1対2に分けてしまった。
ボクの親指の爪の間に詰まったチョコが、物悲しく訴えかけてくる。
「フォッ ホッ ホッ ホッ、こりゃぁ愉快じゃのぉ」
「・・・・」
(ちくしょうッ、なんでチャンと割れないんだ。このバカチョコ!)
そうは思いながらも笑われてるボクは、悔しがる姿を見せるとカッコ悪いので、なんとかゴマかす方法はないかと考えた。
({!}あッそうだッ! いいこと思いついたぞ。見てろよ!)
ボクは、{ワザと大きさが違うように分けたんだよ}とでも言うように、澄ました顔と余裕綽々の態度で、
「ほらサっちゃん、チョコレートだよ。大きい方をあげるね」
と、{大きい方}に少しだけ力を込めて言って、サっちゃんに差し出した。
バカである。
ボクは懲りずに、またしても{○○なお兄ちゃん}を演じようとしていた。
しかもサっちゃんを利用して、おじいさんに褒めてもらおうとまでしているのだ。
サっちゃんはクローバーを下に置くと、風で飛ばされてしまわないよう茎の部分に小石を置いたあと、ボクの手からその大きい方のチョコレートを受け取った。
ボクは、{ほら、ボクってすごいでしょ。褒めてくれないとダメだからね}という態度で、得意満面でおじいさんの様子を伺った。
でもおじいさんは、ため息をつくように白髭を撫でながら、しかも無表情で、
「ふむ」
とだけ言った。
(んッ? なんにも言ってくれないぞ。なんでだろう?)
空白の時間が流れた。
ほんの少しの不安に駆られたボクは、
「これじゃダメなの?」
って、不満げに聞いてみたけど、おじいさんは、
「今日のところは、これくらいにしておこうかのぉ」
と、{勘弁してやるか…}みたいな感じで言ってきた。
(答えになってないじゃないか! ボクを褒めるのがイヤで逃げるのか?)
ボクの中に作られた空白が、さらにボクを不安の世界に引きずり込み、
「チョット待ってよ。正解を教えてよ!」
と、ボクの口調を強めさせた。
そう…、ボクはイライラしていたのだ。
**********
イライラしているボクを見たおじいさんは、
「正解とか、不正解とかの問題ではないのじゃよ。坊や」
と、やわらかく諭すような表情で答えた。
不思議に思ったボクは、苛立ちを抑えながらおじいさんに聞いた。
「正解がない問題なの? だったらクイズにならないでしょ」
「別にクイズを出したわけではなかったのじゃがのぉ。坊やはクイズじゃと思っておったのか。フォッ、ホッ ホッ まぁ似たようなもんかのぉ」
「じゃぁ、ボクは間違ってなかったんだね?」
「ふむ、別に間違ってはおらんぞ」
(間違ってないのか…)
ボクは、ハズレたワケじゃないことがわかったので、少し落ち着いた。
というより、ボクの中の苛立ちと不安が、みるみるうちに興味に変わっていく。
「じゃぁ、正解なんだ」
「ふむ、正解と言えば正解かもしれんのぉ」
「ん~、よくわかんないよ。それじゃぁ、正解はたくさんあるってこと?」
「そうとも言えるのぉ」
(???)
ますますわからなくなってきた。
(間違いじゃないから正解かと思ったら、正解といえば正解じゃないかもしれない?)
頭の中が何やら変にこんがらがってきて、モヤモヤしてきて気持ちが悪い……
ボクはハッキリと白黒つけて、脳ミソにできた混乱と空白を解消したくなってきた。
「じゃぁ、さっきのボクの答えでもいいんだよねぇ?」
覗き込むように、そして少し念を押すようにおじいさんに聞いた。
おじいさんは白髭を2、3度撫でたあと、
「ふむ、まずまずじゃったのぉ。坊や」
と、ボクの頭を撫でるように軽くポンポンと叩きながら、やさしく言った。
(んッ? まずまず?)
その言葉に少し引っかかったけど、頭の心地よい感触と、おじいさんのやさしい眼を見ていたら、何だかどうでもよくなってきた。
いや、素直になっていった。
「それじゃぁ、おじいさん? ボクは、どうやってチョコレートを分けた方が良かったのかなぁ? ほかにどんな方法があるの?」
ほとんど何も考えず、ストンと出たボクの質問に、おじいさんの眼が変わった。
ボクの心底を見通すように、静かにジッと見つめてきた。
「坊やは、既に知っておるよ」
ボクの頭の中に、{?}マークが灯った。
「えッ? ボクはその答えを知ってるの? ボクその答え知らないよ。だから、おじいさんに聞いてるのに…」
「まだ気づいてないだけじゃよ。坊やの中には、既に答えはあるのじゃよ」
(まだ気づいていない? ボクが?…何を?)
ボクの頭の中が、大きな{?}マークで埋め尽くされて、ポカ~ンとなった。
そのボクのポカ~ン中、おじいさんはサっちゃんに眼をやると、ボクにしてくれたようにサっちゃんの頭をポンポンとやさしく叩きながら、
「そうじゃろ? お嬢ちゃん?」
そう言いながら、サっちゃんにやさしく微笑んだ。
それまで無表情で黙っていたサっちゃんは、おじいさんに頭をポンポンされたあと何かに気がついたのか、それとも謎が解けたのかはわからないけど、そのおじいさんを見つめると、突然{アッ!}という表情を見せた。
おじいさんは、そのサっちゃんを見ながら、大きくゆっくり{うん、うん}って頷くと、サっちゃんもそれに同意するように大きくコクリと頷いた。
口を開けてポカ~ン状態になってるボクは、その2人の光景を見て、
(なんだ? この2人…、何もしゃべってないのに、何かわかったみたいに頷き合ってる。そういやこの前、テレビのUFO番組でやってたテレパシーってヤツみたいだな…、いったい何をやってんだろう?)
なんてことを思いながら、おじいさんとサっちゃんを見ていた。
でもその矢先、おじいさんが、
「さてと、ワシはそろそろ帰るとするかのぉ」
と、ボクとサっちゃんを交互に見て帰ろうとした。
「え~ッ、帰っちゃうのおじいさん・・・ボクが知らないけど知ってるってこと、教えてくれないの? 教えてくれないまま帰るなんて、そんなのズルイよぉ」
さっきまでポカンと開いていた口を、今は尖がらせて甘えるボクがそこにいた。
そんなボクに、おじいさんは軽く微笑むと、
「じゃぁ、またな」
と言って西の方を向き、手をうしろに組んで歩き始めた。
「ホントに帰っちゃうの? 教えてよぉ!」
そのボクの声におじいさんは足を止め、手をうしろに組んだまま下から覗き込むように振り返った。
そしてボクを見ながら一呼吸おいて、静かに、
「坊やなら、いずれわかるじゃろぉ」
そう言って帰っていった。
その言葉や声…、いや、おじいさんからボクに伝わってくる{何か}を感じたボクは、それ以上、言葉を続けることができなかった。
ボクはただ、だんだん西の方に小さく消えて行くおじいさんを黙って見送るだけだった。
**********
おじいさんがボンヤリとしか見えなくなったのでサっちゃんの方に眼をやると、まだサっちゃんはおじいさんを見送っているようだ。
(サッちゃんには、まだハッキリとおじいさんが見えてんのかな?)
その表情はボクとは違い、{また遊ぼうね}という感じの笑顔だった。
(いったい、サっちゃんとおじいさんは、テレパシーで何を話してたんだろう?)
そう思うと、チョット羨ましかった。
ゴーン ゴーーン ゴーーーン
夕方の鐘が鳴り響いた。
なのでボクは、頭の中のこんがらがった糸を振りほどくように、
「さぁ、サっちゃん、帰ろっか?」
って声をかけると、サっちゃんは自分の手に付いたチョコレートをキレイにするために、空き地の脇に生えている雑草でゴシゴシとやりだした。
そして小石で押さえてあった7つ葉のクローバーを手に取ると、ドカンの横に置いてあった真っ赤なサンダルへ、トコトコ向かった。
真っ赤なサンダルを履いたサっちゃんは{ありがとう。また遊ぼうねッ}っていう感じで、まるで天の神様にでも届けるかのように爪先立ちになり、精一杯の伸びをしながら7つ葉のクローバーを右手とともに高く掲げた。
(かわいいよな…。天の神様に何て挨拶してんだろ?)
そのサっちゃんのうしろに、お日さまが夕日になりかけているのが見えた。
それに気がついて空を見渡すと、思わず青空と夕日の赤のコントラストに見とれてしまった。
(確かこの真ん中の色って、バイオレットって言うんだよな。あッ!、お月さまもキレイに出てる)
ボクは、なんだか宇宙にいるような気分になったので、しばらくその感覚を楽しんだあと、ヒラヒラと舞うように遊んでいるサっちゃんを手招きしながら呼んだ。
「ほらサっちゃん、クローバーが萎れるよ。クローバーが元気なうちに帰ろッ」
クルっと振り向いたサッちゃんがニコリと頷いた。
ピキュ ピキュ ピキュ ピキュ
サっちゃんのサンダルの音は、いつもは後ろから聞こえてくるけど、今日の帰りは前から聞こえてくる。
なんだか軽やかだ。
(早く帰って、お母さんに7つ葉のクローバーを見せたくてしょうがないんだろうな)
ボクの顔が自然と緩んだ。
でもだ…
(今日のことは、サっちゃんが7つ葉のクローバーを見つけたこと以外は、誰にも言わないでおこう。特におじいさんのことは…)
なぜかそう思った。
理由はわからないけど、言わない方がいい…、そう思った。
サっちゃんを送り届けたボクも自分の家に帰りつくと、
「ただいま~ッ」
と、その声は、いつもの元気な、でもスッキリとしたボクの声だった。
しかしこの日の出来事は、毎日の保育園と友だちとの遊びの中でかき消されていった。
次におじいさんに会うまでは…
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【質問】
アナタガ エンジテイルノハ ダレデスカ?
ソシテ…
アナタヲ エンジテイルノハ ダレデスカ?
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【幼年編《02》チョコレート】おしまい。