i03h-header

イノチノツカイカタ第3部《青年編》第08話「引き籠り」

第1話から読んでない方はホームからどうぞ。


【初日】

(さてと、取り掛かるか…)

 僕は携帯電話の電源をOFFにして、部屋のカーテンを閉め切った。

 誰も家にいないっていう、留守状態を装うためだ。

 もちろん車は同僚に預けたし、1週間分の食料もバッチリ買い込んだ。

 でもだ。

(マズイな… これじゃぁ、部屋の中が暑すぎるぞ)

 そりゃそうだろう、今は夏本番真っ盛りだ。

 でも、エアコンをつけたら室外機の音でバレてしまう… だから扇風機をつけてみた。

 しかし、扇風機からのモアッとした熱風が僕の顔を歪める。

 ということで10分後、僕はエアコンのスイッチをピッと鳴らした。

 ヘタレ健在である。

(快適快適。エアコン考えた人って絶対いい人だよ、うんッ絶対。 感謝感謝!)

 まぁそんなこんなで引き籠りの初日がスタートした。

(え~ッと、まずは確認だ。おさらいだ、おさらい。んッ? おさらい? っていうか、確認、検証、再考、実践とか、いつもやってることだよな?)

 いきなりの頓挫だ。

 でも引き籠り期間は1週間と決めていたので、僕はとりあえず原点に戻ることにした。

(え~ッと、引き籠りっていうのは… ん~と、テレビとゲーム、それと、あッ、お菓子だ! そう、お菓子ッ!)

 そう思い立つと、大量に買い込んであるお菓子を、そそくさと取りに行った。

 そしてお菓子に囲まれながらテレビの前に、デンッ と座った。

「これでよしッ、ゲームはあとだ。まずはテレビだ、テレビ」

 誰もいない部屋でお菓子に囲まれてつぶやくと、テレビのスイッチを入れた。

(よっしゃぁ! これでテレビ・ゲーム・お菓子の{引き籠り金ピカ3点セット}の完了だぜ。バッチリだ! なんか、やる気でてきたぞぉッ!)

 そう… 僕の言う原点とは、引き籠りの原点のことだった。

 つまりそこには、これで{立派な引き籠り}の完成だ!…と勘違いしているバカがいるだけだった。

 しかしだ。テレビは意外に効果的だった。

 自分の頭の中だけでやってると、どうしてもテーマを決めてしまう。

 すると、どんどん飛び火して、{あれッ? テーマなんだっけ?}状態となってしまう。

 でもテレビを見ていればテーマがコロコロ変わるので、いろんなことに考えを巡らせることができたし、テーマにとらわれることもなかった。

 深く入り込みすぎる僕には、好都合なシロモノだ。

 それともうひとつ、僕が第2段階の後半に差し掛かかるときに気がついたことなんだけど、僕が{ひらめく}ときは、リラックス状態のときが一番多かった。

 だからその状態、つまり{とらわれていない状態}をつくりだすことが、今回の準備を終えるためには必須条件と感じていたのだ。

 また、{とらわれていない状態をつくりだす}ってことに{とらなわない}ためには、このテレビってヤツが、うってつけだった。

(テレビを考えた人って、絶対いい人だよな…)

 もういい、話を次にすすめよう。

**********

 僕がテレビを見て、文句を言いながら考えてたことはこんなことだった。

 報道ニュースでは、災害にあった被災者にレポーターがインタビューしていた。

{災難でしたねぇ。お辛いですねぇ。そうですか、ご家族が… そのときはどんなでしたか? これからが大変ですねぇ}などと、とにかく庶民からの{御涙頂戴}を煽ってやってる。

 僕はそれを見て、仮に自分が被災者だったらどう答えっかな?…と思った。

(被災者が、泣いたり、わめいたりしないと視聴率が取れないもんなぁ。もし僕がこのインタビューに答えたら… カットされて放映してくんねぇな、こりゃ)

 政治ニュースでは、キャスターが、{政治家っていうのは、どうしてこんなにダメなんでしょうか? こんな法案を可決するなんて…}と、お決まりの文句を並び立てていた。

(その政治家を選んだのは国民なんだから、{国民は、どうしてこんなにダメなんでしょうか? こんな政治家を選ぶなんて}って言ってみろよ。それに政治家に期待するものは?って質問に、{クリーンさ}ってのを一番にする国民なんだぞ。そんな{おバカ}な国民が政治家を選んだって…)

 お菓子をポリポリ食べながらテレビに愚痴っていると、{続いては芸能ニュースです}って、切り替えられてしまった。

 ということで芸能ニュース。

 まぁくだらないったら、ありゃしない。

 アゴが外れそうになる。

 芸能人の誰と誰が熱愛中だの不倫だの、挙句の果てには芸能人が飼ってるペットの名前まで紹介してやがる。

 くだらないにもほどがある。{おバカ}丸出しだ。

 だんだん腹が立ってきた僕は、ひとまずトイレに避難することにした。

 しかしトイレに逃げ込んでも、芸能ニュースが頭から離れない。

 職場やなんかでも、

{ねぇ知ってる? あの芸能人と、この芸能人が付き合ってるんだってさ!}

{え~ッ、ウッソぉぉぉぉ!}

{信じらんなぁ~い}

 っとまぁ、こんな会話が頻繁にヤリ取りされていた。

 僕は、そんな会話を聞いて、

(あんたら、その芸能人の友だちか何かなのかよ。あんたらの頭の中が信じらんねぇよ)

 って心の中でツッコミを入れていた。

 でも、もちろん僕はそんな{おバカ}な話をされても、答えるときは{へぇ~、そうなんだぁ}と言っていた。

 いわゆる{大人の対応}ってヤツだ。

 こう見えても僕は28歳の大人なのだ!

 トイレから戻ると、まだ芸能ニュースをやってるみたいだ。

(んッ?)

 テレビの画面に、僕の興味をそそってくる文字が見えた。

{大物歌手の娘。○○の容疑で身柄拘束}

 その大物歌手が、録画かなんかはわからないけどカメラのフラッシュを浴びながら、たくさんのマイクを向けられている。

(おッ、こりゃ面白くなりそうだな。でもこの人、そんなに大物でもないのにな。だいたいテレビっていうのは、芸能人だったら{大物}で、一般の女性になんかあったら{美人○○}とかって付けたがるよな)

 そうこう思っていると、その大物?歌手がインタビューに答えだした。

{娘は絶対にやってないって信じてます。親が自分の子どもを信じないでどうしますか? そうでしょう?}

 と、毅然として答えていた。

(でたッ! 全通念の{私は子どもを信じて愛する、美しい父親アピール}だ)

 僕は、あのときの先生を思い出しながら、

(でッ?… やってたらどんすんだよ?)

 と、僕は娘がやってることを期待して、ヘラつきながら結末を考えていた。

(やってなかったら、{やってないってわかってホッとしました。でも娘のことは信じてました。しかしお騒がせして申し訳ありません}ってな感じかな? でもやってたら、{申し訳ありませんッ、本当に申し訳ありません。まさか… でも娘は娘です。私の大事な娘です。よく反省して償いを}ってな感じで泣きながら、親子愛の御涙頂戴アピール開始だろうな)

 そうやって考えていると、ある言葉に引っかかった。

(でも、この{ホッとした}って部分を聞いて、{わかる人}って、ごく少数だろうな? まぁ、言ってる本人は{わかってない}ってのは、自分で証明してんだけどな) 

「ハァ~…」 

 しょうがねぇのかな…、っていう諦めにも似た感じの溜め息が出てしまった。

 まぁ、こんな感じで初日終了。

**********

【2日目】

「もう10時? テレビテレビテレビテレビ!」

 目覚めと同時にテレビのリモコンを探して、慌ててスイッチを入れた。

 きのうの夜、寝る前にネットのニュースで、{大物歌手の娘、容疑を認める}の文字を見ていた僕は、めまぐるしくチャンネルを変えた。

(なんで政治のニュースなんかやってんだよ! ドラマじゃねぇよ、クソッ! 天気は外を見りゃわかるってんだよ! このやろう… チッ、ここも違う。 ちっくしょうめ、なんで芸能ニュースやってねぇんだよッ! 早くやれよッ、芸能ニュースをよッ!)

 ホレこの通り。

 これで僕も{おバカ}の仲間入りということだ。

 そうこうガチャガチャやっているうちに、やっとこさっとこ当たりを引いた僕はテレビにかじりついた。

 そして大物歌手のコメントが流れ出すとボリュームを上げた。

 その大物歌手のコメントが終わった途端、

「アハハハ。やっぱり言いやがった。僕が思ってた通りのこと、この大物か小物かわからん歌手、泣きながらなぞるように言いやがった。アハハハ」

 僕は手を叩いて大喜びした。

 はたから見たらこの僕は、さぞかし{クソッたれの下衆野郎}に見えただろうなって思う。

 んで、コメンテーターのおバカ発言が出た。

{お辛いでしょうねぇ。でも頑張って欲しいですよね}

(なんだそれ? まさかその歌手に言ってんのか? いや、違うだろそれ。一番辛いのは、親から{信じてる}って言葉で追い込まれた娘の方なんじゃねぇのかよ?)

 その{おバカ}なコメンテーターを見てたら、なんだかシラケてきた。

 それに大物歌手のコメントを聞いてたら、切なくもなってきた。

「仕事が忙しくて、一緒にいてやれる時間がほとんど取れなくて…」

 そう言って泣く姿を見てたら、

(なぁんだそうだったのか。仕事上の{立場}からくる父親アピールだけかと思ったら、あんたの{アピールの度合い}の最大原因はソコかいな… あんた、娘に対しても画面を通して言い訳アピールしてたのかよ。娘はたまらんな、こりゃ…)

 アホくさいような哀しい感情が込み上がってきたので、たまらずテレビを切った。

 もうその日はテレビをやめて、ゲームを散々やって2日目終了。

**********

【3日目】

 もう完全に僕は、テレビっ子になっていた。

{あなたには悪霊が憑いています。だから、そういうことが起こるのです}

{あなたは過去に悪いことをした、だからそんな目に合うのです}

{すべては因果応報、原因と結果。だから災いがあなたに降りかかるのです}

 思いっきりお悩み相談テレビの真っ最中だ。

(相変わらず{おバカ}なことやってんなぁ。そんなこと言うなら被災地に行って、{あなたが悪いからそんなことが起こるのです}とか、子どもを亡くした親たちに、{あなたが、そしてこの子が悪いからそんな目に合うのです}って、面と向かって言えるのかよ。言えんだろ?)

 実際に何人かその類いの人と話したことがあるけど、僕がそんなことを言うと決まって、{いや前世が…}と言い出す。

 始末が悪いってのは、このことだ。

 僕はこういう輩を見ると、妙に腹が立ってくる。

 霊を信じるとか信じないとか、それ以前での話でだ。

 僕は、霊がいようがいなかろうが、どっちだっていい。

 というより、霊はいるだろうと思ってるくらいだ。

 でもしかしだ。

 それを利用して恐怖や不安で人をコントロールしようとしたり、こともあろうか死人にまで鞭を打ちやがる…

 それが気に食わないのだ。

 まぁ、なかには霊が見えるっていうと注目を浴びるので、自尊心が欠落したり、満たされていないヤツが言ってる場合も多々あるみたいだったけどね。

 でも、どっちにしろ僕には、それは人と死に対する{冒涜}としか思えない。

 だから、そんなことを言う輩には、

「因果応報、原因と結果の法則ってのは、そんなんじゃねぇよ。んッ? 除霊だと? 除霊できるんだったら全世界の除霊をやってから来いってんだ。お前がさっさと除霊しないから、まだ罪もない幼い子ども達にまで災難が襲ってきてるんだろうが。除霊しないでここに来て能書き垂れてるなら、お前も悪霊と一緒で同罪だッ! このバカタレが!」

 と思っているし、言っていた。

 だがしかし、敵もさることながら食い下がる輩がいた。

「いやそうではない。私たちの心が罪をつくるのだ。だからそれが、うんたらかんたら」

「おいチョット待て! ということは人間が悪いんだな? だったら人間が、みんな死んじまえばいいんだな?」

「だから私は、人々が心の罪をつくらないように、日頃の行いを」

「コラ待てお前、悪霊はどこ行った? 除霊はどうなったんだ? お前、霊が見える、除霊するって言ってここに来たんだぞ。それがお前、今何やってんだ。今ここでお前がやってることは、単なる自己啓発だろ? お前、いったい何しにここへ来たんだよ?」

「いや、あなたには見えないかもしれないが、私には見える」

「僕だって夢に死んだ父ちゃんが出てくるよ。それに、アルコールや薬物中毒患者も幻覚を見てるよ。先天的に脳に疾患や障害があって見る人もいるし、何が違うの?」

「それと私とは違う」

「何が?」

「・・・・」

「もういい。帰れ」

 だいたいそんな輩とは、こんな感じで僕は遊んでいた。

 遊びだ、遊び。小さな遊びだ。

 もう一度言う。

 僕は、霊がいるなら、いるでよし。いないなら、いないでよし。

 ただそれだけだ。以上も以下もない。

 とまぁ、思い出した怒りを吐き出して、僕のたぎる血潮と荒ぶる魂が沈静化したところで、プーーーン という時報とともに{恋愛ドラマ}が始まった。

 ドロドロ恋愛ドラマの最終回だ。ウキウキする。

 終わってみると案の定、苦難を乗り越えた2人の恋が実ってハッピーエンド。

 見事、晴れやかな結婚式のシーンで幕を閉じた。

(今、これ見て泣いてる人って多いんだろうなぁ。2人が結ばれて良かったって思ってるだろうけど、んでも知ってんのかなぁ? 一夫一婦制ってものを…)

 僕は、{一夫一婦制は美しい}という全通念のことを考えていた。

 それを考えると、過去に学んだことが浮かんできた。

『もともと人類は一夫多妻制だった。しかし、あぶれた男たちの不満は多くの妻を持つ男、つまり身分の高い男に対して向けられた。それに危険を感じた身分の高い男が、徐々に一夫一婦制に移行したという経緯が少なからずある。かなり多数の民族や部族、集団では、これが一夫一婦制を取り入れることになった原因の最大要素であることは、ほぼ間違いない。そして、その一夫一婦制に移行するときに、男は喜び、多くの女は不満を募らせ反対したという』

 つまりだ。

 一夫一婦制とは、{男に女を分け与えた}という一面があるし、移行するときは多くの女は不満だったというのだ。

 だからといって僕は、一夫一婦制が悪いとは、まったく思っていない。

 それは単なる{流れ}だと思っている。

 一夫多妻、多夫一婦、多夫多妻etc. なんでもいいと僕は思っているのだ。

 ただ、一夫一婦は美しいという決めつけは、人類の言い訳と、あるモノ達による都合がもたらした{刷り込み}になっているというだけだ。

 だから、対極にあるモノがドロドロと際立ってしまっているのだ。

 今、この地球上にも一夫一婦制以外の制度を敷くところがある。

 この先どうなるかはわからないけど、僕はそれを美しいと感じているし、尊重したいと思っている。

 僕は、一夫一婦制も含め、その{流れ}を美しいと思っているのだ。

 その証拠に、僕はこのドラマを見終わったあと、小さく丸くなって膝を抱え、

{良かったね。おめでとう。ずっと仲良くね}

 って言いながら泣いたんだから。

 というわけで、恥ずかしいので3日目終了。

**********

【4日目】

 どうやらテレビでコメディー映画をやっているようだ。

 その映画での、ある職場のシーンが僕の経験と重なり合った。

 それは、まったく一緒と言っていいほどだった。

 そのシーンとは、こうだった。

 重大なヘマをした女性に{知らなかった}んだから大丈夫よ。と慰めたのはいいのだけど、その数日後、今度は慰めたその女性が重大なヘマをやらかしていた。

 そのヘマも、その女性が{知らなかった}ために起こったヘマだった。

 だけどその女性は、{私が悪いのよ。知らなかったからといったって、私のせいよ}と言って自分を責めていた。

 そんな内容だった。

(この映画の女性、自分の矛盾に気がついているんだろうか? いや、気がついていたら、こんなことを、こんなふうには言わないよな)

 僕は、スパルタ会社のときに、その女性に問いかけたことを思い出した。

「ねぇ、同僚には{知らなかった}んだから大丈夫だよって言ったよね」

「うん」

「じゃぁ、自分のときには、何で自分を責めたの?{知らなかった}のにさぁ」

「・・・・」

「じゃぁ{知らなかった}ことでも、ヘマしたら悪いんだって思っているのなら、何でそのとき同僚に、{あなたが悪いのよ}って言わなかったの?」

「そんなこと言えるワケないじゃない」

「じゃぁウソついたの? おべんちゃら?」

「どうしてそうなるのよ」

「あなたがヘマをしたときに、あなたは{ヘマしたら知らなくても悪いのよ}って言ったよね?」

「・・・・」

「その言葉を、あの女性が横で聞いてて涙目になってたのは知ってんの?」

「・・・・」

 するとその女性は、プイッと職場の部屋から出ていってしまった。

 どうやら逃げ道を塞いでしまったようだ。

 それから辞めるまでの間、僕はその女性から無視され続けた。

 まぁ、自業自得というヤツだ。

 でもやはりこの女性、まったく気がついていない。

 映画の女性もそうだ。

 矛盾という言葉は全通念ではあまりいい意味では使われないけど、僕はこの矛盾の中にこそ、大切なモノが含まれていると思っている。

 だけど、その矛盾を{知っている}か{知らないか}で、まったく違ったモノが引き起こさるのだ。

 それは正反対と言っていい。

 知らないで矛盾をやれば、それは単なるアピールにしかならない。

 その女性も、映画の女性も、自分は善人で良い人で、正しく責任感のある人、思いやりのある人…

 そのアピールを場当たり的にやったに過ぎなくなっていた。

 特に僕の経験上のその女性は、プイッと職場からいなくなることや、僕を無視する態度でソレを証明してしまっていた。

 たぶんこのことに、その女性どころか、職場の誰も気づいてはいなかっただろう。

 あの涙目になった同僚の女性も、矛盾の中にある大切なモノを知っていれば、その女性の言葉や態度に悲しむことは無かったろうに…

**********

「あッ、終わってる」

 少し考え込みすぎたようだ。

 2時間のコメディー映画が終わって、ニュース番組が始まっていた。

 コメディー映画の内容が、あのシーン以降まったく記憶にない。

 でも、なにやら名の知れた有名企業が不正を働いたらしく、キャスターが憤慨していたので、すぐに引き込まれた。

 でも、

{いやぁ、まったくもって言語道断ですね。一般消費者を騙すなんて許せません。ここは徹底的に真相を究明してもらいたいと思います}

 と、締めくくって次のコーナーに移っていったので、なんのことかサッパリわからない僕はチャンネルを変え、その不正とやらが一体なんなのかを知ろうとした。

「あッ、これだこれだ。このニュース番組なら、今始まったばっかりだ」

 そう思って見ていると、すぐさまその不正のニュースが流れた。

 でもだ。原稿を読み上げるだけで映像がない。

 キャスターも、

{いったい、どうなっているんでしょうか? それでは次のニュースです}

 と、やけに扱いが小さいし、キャスターの歯切れも悪い。

「???・・・{!}」

 そう感じた僕は、その番組のスポンサーや資本関係を調べると、やっぱりだった。

(結局、視聴率が上がる→スポンサーが喜ぶ→売上増大→株主が喜ぶっていうサイクルか? 力関係か? まぁ全部じゃないだろうけど、スポンサーや株主はけなせねぇんだろうな。しょうがねぇかのな? 政治家を叩けば国民が喜ぶってのも、低レベルだし…)

 そう思うと、視聴率絶対主義ってのも、見方によっては面白かった。

(視聴率か? それとも放送倫理か? それが問題だなこりゃ… でもまぁ、今のところ、テレビってヤツが一番国民を反映してるよな。その国民のレベルっていうか質をな… 番組内容=国民の質ってか? ハハ。んッ? まてよ、そういや誰かが言ってたよな…、{国の将来は法律の数を見ればわかる。その数が増えているのであれば、その国は衰退する}みたいな感じだったかな? そこにテレビ番組の質ってのも入れた方がいいかもな? アハハハハ)

 ということで4日目は、倫理ってヤツを考えながら就寝にて終了。

**********

【質問】

ムジュンヲ シッテイル ト シラナイ トデハ ドンナチガイガ アルノデスカ?

ソレト アナタハ ドンナテレビヲ ナンノタメニ ミテイマスカ?

ソレガ アナタノ シツノレベル ・・・ トイウコトデ ヨロシイデスカ?

**********

【青年編《08》引き籠り】おしまい。

青年編《09》えーーーッ!】へ

ホームへ戻る

© 2024 《無料小説》イノチノツカイカタ